☆☆☆ 異世界戦記アニメ「幼女戦記」

2017.07.04

非情なやり手ビジネスマンが大戦期ドイツ風の魔法世界に転生する異世界戦記モノ小説のアニメ化作品

☆☆☆ すごく面白い
ジャンル: ファンタジー戦記

1. 幼女の外見、非情な頭脳、次々に逆境
2. 戦記モノとしての面白さ
3. 的確な芝居と絶妙なテンポ

こういう人にオススメ)
戦記モノが好きな方
さすおに系が好きな方
悠木碧さんのファンの方

1. 幼女の外見、非情な頭脳、次々に逆境

本作の主人公は完全に悪役です。非情なやり手ビジネスマンが幼女に転生しているので頭脳も優秀ですし、魔法の能力が高い身体に転生したのでそれを活かして無敵の軍人になっています。見た目は幼い少女ですが、悪魔みたいな顔でギラッと笑う顔は萌え的な可愛らしさは皆無。半ば悪魔のような存在として描かれます。信心がないことを理由に神に転生させられてからは、神を敵視して文字通り神に弓引く存在になりますから役柄的には悪魔でしかありません。

その主人公に次々と逆境が襲いかかります。主人公はチート的に強いので連戦連勝しますが、苦境にある母国の命令で無茶な任務に就き続けたり、第3国の介入など突発的な事態で危機に陥ったり、神の加護を受けた敵兵に奇襲されたり、人道的に難しい状況で部下の反抗にあったりと次々に試練に晒されます。何しろ悪役ですので、悪役が苦境に立つのはある意味痛快です。DEATH NOTEもそうでしたが、主人公自身が完全に悪役だと逆境が続くほど楽しくなっていくのは面白いです。

ところでこの主人公、極悪人かというとそうとも言い切れません。自分の出世の為ではありますが部下を死なせないよう配慮しますし、部下を労ったり進路を決めてやったりも忘れません。負傷した部下はすぐに見つけて声をかけますし、強敵に当たっては自ら先頭に立って戦いにあたります。安全な場所から考えなしの命令を下し、部下をぞんざいに扱うような上官や、無差別爆撃で多数の市民を殺すような軍人と比べると、悪とはなんであったかと思ったりもします。

 2. 戦記モノとしての面白さ

架空の戦記モノ、戦争ものとしても本作はとても面白いです。1つ1つのエピソードにリアリティがあり、確かにそんな事が起こりそうだな、実際の歴史でもあったのかなと思わされます。作者は戦史に詳しいのでしょうか。行軍訓練中に雪崩が起こったり、後方をパルチザンに遮断されたり、如何にもありそうです。

この世界の魔道士は装備を使って自由に飛ぶことができ、銃に魔力を込めて強力な貫通弾、炸裂弾を撃てるので、現実世界におけるヘリのような戦闘機のような位置づけで描かれます。序盤では主に航空機の役割を果たしますが、垂直離陸ができますし歩兵と同じように行動・輸送できますから、任務も多岐に渡っていて飽きません。

演出も見事です。少し緩んだ空気を見せた直後にカメラがすっと下を見ると絶望的な光景が広がっていたり、会議室で勝利の報を待つ参謀将校たちなど、色んな角度から描かれる戦いの臨場感は凄まじいです。戦争用語なども知らない人が多そうな場合でも説明せずに進めつつ、ニュアンスは伝わるようにしてあって素晴らしいです。装備品の作りも各軍で設計が違っていて、リアリティ作りに役立っています。アニメ版ではSEも非常に凝っていて、それぞれの兵器の音の違いも楽しめます。

近年の戦争モノの例に漏れず本作も戦場の悲惨さもバッチリと描かれています。無邪気に戦争を礼賛すのものではないところも良いですね。

3. 的確な芝居と絶妙なテンポ

本作は台詞も非常に的確です。単に状況を伝えるだけでなく、1つ1つの台詞が的確にキャラクターの性格と意図を表していて非常に巧みです。キャストも非常に豪華で芝居の上手い人が揃っているので抑揚や声の震え、微かなブレスで内心がバシバシ伝わってきます。少ない台詞で必要な情報が伝わるということは話のテンポが良くなるということですが、本作を見ると改めてそれを感じさせられます。

主人公が大隊長である関係でキャラクターの人数は多く、それぞれの性格を描いている尺はほとんどないのですが、巧みな台詞に加えて仕草や動きも丁寧に演出されているおかげで誰がどんな人物なのか、しっかりと伝わってきます。無駄な台詞や動きはほぼ見つからず、一体どうすればこれ程の作品が仕上がるのか驚くほどです。

その結果として本作は本当に面白いです。是非一度視聴してみてください。

Categorised in:

コメントしていってね!