☆☆☆ 海外ドラマ「ナイトマネージャー」
ホテルで夜間のマネージャー(=ナイトマネージャー)を勤めていた男が、とある事件をきっかけに世界的に手配されている武器商を憎み、遂には追い詰めていく。新しいテイストのスパイドラマ。
本作の魅力)
1. 劇的な転身
2. 圧倒的なキャラクターの魅力
3. 物語全体に流れる美意識
☆☆☆ 非常に面白い
スパイ映画が好きな方に
セクシーな大人の男が見たい方に
1. 劇的な転身
主人公はエジプトのホテルで夜間のマネージャーを勤める英国人です。ある日、地元の有力者の愛人から預かった密輸武器リストを当局に流したところ、その愛人が殺されます。この裏に世界的に手配されている武器商の存在を知り、彼は武器商を追う運命へと進んでいきます。
徐々に手を汚し、さりげない様子を装いながら非合法な集団に馴染んでいき、遂には正義の人なのか悪人なのか分からないところまで踏み込んでいくのは、観ていてゾクゾクします。
2. 圧倒的なキャラクターの魅力
主人公はリラックスした細身の男性で、ホテルマンらしい人当たりの良さがありながら、人を寄せ付けない寂しそうな冷たさがあり、なかなか見ないタイプの主人公像です。表情はあまり現しませんが、内心の複雑な想いが伝わってくるような、静かな芝居をしていてとても魅力的です。
敵役である武器商は容赦なく人を殺し、内戦を深刻化させるような量の武器を紛争地帯に流し込む極悪人です。ところが、どこか飄々として主人公の性格を面白がったりするなど、常に余裕があってキュートな人物として描かれます。
再開した武器商が連れている愛人も、母に預けている息子を想って泣いたり、母に薄汚い娼婦と言われたり、パトロンである武器商の息子をとても大切にしていたりと、愛人という従属的な立場の人物ではなく、可愛らしく冗談を言ったりと、悲しくも しなやかな人物として描かれていて美しいです。
MI6で主人公と協力するオフィサーは落ち着いた雰囲気の中年女性で、一見して情報局員に見えませんしなんと妊娠中ですが、強烈にタフで絶対にあきらめません。同じく協力者のCIAのオフィサーは優しそうな黒人男性。落ち着いていて凄みより柔らかさが前面に感じられます。こっちも従来のスパイものにはあまり登場しない人物像です。
誰一人としてありきたりでなく、それが故に物語にどんどん惹き込まれます。キャラクターの性格付けに深みがあり、表面的に語られない中に様々な人間関係があることを、視線や口調などの細かい芝居で描いていて、非常に非常に素晴らしいです。
3. 物語全体に流れる美意識
主人公がホテルのナイトマネージャーという立場から気の利いたサービスを行う人物なんですが、彼だけでなく登場人物全員が何かとエスプリの利いた言動をとります。主人公が泳いで浜に戻ると「足に合うと良いが」とメッセージカードを添えて靴が置いてあったり、雑談を装って重要な情報を近くにいるエージェントに伝えたり、いちいち演出がスマートです。
台詞も最高です。主人公は武器商をスパイする立場なので、巧みな質問で探り出そうとしますが、少し考えてから出てくる言葉がいちいち的確です。はぐらかす側も上手くかわすので、静かに交わされるやりとりさえ非常にエキサイティング。最高です。
本作は8話完結の比較的短いシリーズでもあり、視聴の爽快感も素晴らしいです。スパイ大国英国発の新しい名作スパイドラマになるでしょう。オススメです。
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