☆☆☆ アニメ「オーバーロード」

2017.07.08

ゲームものというよりは異世界モノ。強さだけではどうにもならない面白さを非常に巧みに描く異色の人気小説のアニメ化作品

☆☆☆ すごく面白い
ジャンル: ファンタジー戦記

1. 仮想ゲームものというより異世界モノ
2. 強いだけではどうにもならないという面白さ
3. キャラ付けの絶妙さ

こういう人にオススメ)
・ゲーマーな方
・ファンタジーが好きな方
・凝った設定が好きな方

1. 仮想ゲームものというより異世界モノ

仮想ゲーム世界から出られなくなってしまう、という話。似た設定の話はいくつか存在するけど、本作はゲームとしてというより実際に異世界に入っているように描かれているのが新しく、それが故に面白い作品です。どちらかというと世界設定からスタートして描いた作品だと思いますが、キャラクターや出来事の描き込みが非常に巧みで、極めて高い完成度の物語に仕上がっています。

本作では他のゲームものとは違い、主人公以外のプレイヤーが登場しませんが、これも絶妙です。ゲーマー仲間がいると、ゲームをゲームと認識したメタな会話をしてしまうでしょうが、ひとりですのでゲーム的な認識は主人公のモノローグのみですし、ゲームだと意識したモノローグの回数も徐々に減っていき、この世界の臨場感が増していきます。これが自然で実に巧みです。

2. 強いだけではどうにもならないという面白さ

主人公は廃ゲーマーなので、自キャラはあり得ないレベルで強いんですが、世界についての情報がまったくない状態で行動しますから、情報を収集しながらおっかなびっくり動いていくことになります。NPCだった配下たちも意思をもって行動しますから、どんなコミュニケーションが適切なのかも考えねばなりません。また、いくら強いといってもいない場所では影響力を行使できませんから、主人公がいない場所での出来事への対処は遅くなります。チート的に強い自キャラと配下であっても、何かと思うにいかない事態が発生して物語が動いていきます。

ちょっとした行為が周囲に影響を与えて、結果悲劇に繋がったりするというのも面白いところで、この辺りゲームものというより異世界転生モノに近い作りだと思います。一方でゲームという設定により主人公が理不尽に強いことへの理由付けにもなっていて、その辺りが実に上手いです。

3.キャラ付けの絶妙さ

配下の守護者たちの性格付けも明確で面白いです。彼らは主人公を崇拝していますが、主人公から尋ねられると、それぞれが全く違う主君像を見ていることが分かります。これが実に上手くキャラクターの性格を示していて素晴らしいです。彼らは主への想いから時に激昂して暴走しかけたりするんですが、怒り方も皆違っていて素晴らしいです。何に腹を立てるか、というのはキャラクターの性格を一番よく現す要素ですよね。

出会う人々もそれぞれ多彩な性格になっていて、かつ違和感がないバランスの良さ。エピソードごとの敵と味方の性格付けも対比的になっていて退屈する暇がありません。恐らくアニメ化するにあたり省略されたエピソードもあるでしょうし、かなり詳細にキャラ付けされているのではないでしょうか。

敵のキャラ付けも抜群に上手いです。主人公は無茶苦茶に強いことに加えてアンデッドキャラクターなので、彼に敵対する者は無慈悲に殺されてしまうんですが、敵のキャラ付けは基本的に嫌なヤツ、悪いヤツなので主人公がなぶり殺しにすると視聴者が爽快感を得られるようになっています。一方で、敵対者たちは単に悪というだけでなく彼らの社会的な立場に沿った行動をとっており、性格付けに無理を感じなくなっているように思えます。嫌なヤツっぷりも観ていて不快になるほどではなく、でも殺られて当然と思えるような絶妙なキャラ付けになっていると思います。 

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