Netflixが変えるアニメビジネス
昭和の時代、テレビで放送されるアニメの制作費はスポンサーが負担してきました。企業イメージの向上や商品の宣伝のためにスポンサーになる場合と、作品中に登場するロボットやアイテムをおもちゃとして販売したい会社がスポンサーになる場合がありましたが、制作費用をスポンサーがすべて負担するのは同じでした。つまりスポンサーの宣伝になるような作品や、スポンサーとタイアップするような作品が求められました。
ところが、平成に入ってから深夜アニメという新しいモデルが登場します。その名の通り深夜に放送されるわけですが、深夜は視聴率が低いのでスポンサーが出してくれる金額もそれほど高くなりませんので、アニメの制作費がスポンサーの広告費を上回ってしまうわけです。この不足分をブルーレイやDVDの販売収益で賄おうとするモデルが深夜アニメモデルで、この頃からいかにDVDの販売枚数を増やすかという戦いが始まります。昭和の時代と比べると安くなったとはいえ1シーズンで数万円の負担というのは結構重いですから、ライトの視聴者を増やすことよりも、その作品に何万円も払うディープな客を捕まえる事が求められ、高額を払う気になるようなハイクオリティな作品も次々と登場するようになりました。昭和のアニメとは大きな違いがここで生じたわけです。
それがNetflix, Amazon Prime, huluなどのサブスクリプションサービスの登場で、再び変わろうとしています。サブスクリプションサービスは定額制ですので新たに番組を視聴する際にユーザーは追加費用を支払いません。ユーザーは次々に自分の好きな作品を選んで視聴することが出来ますし、気に入らなければすぐにそこで再生を止めて違う作品に行くことができます。一方でサービス側は作品が視聴される度にコンテンツの権利者に契約した金額を支払います。ユーザーが複数回同じ作品を視聴してもサービスはコンテンツの権利者に複数回分の金額を支払うわけです。つまり多数のライトな客が観てくれるだけでお金になるわけです。
昭和の時代のアニメはスポンサーに決定権があり、実際の視聴者が面白いと思うかどうかは必ずしも関係ありませんでした。深夜アニメでは視聴者がブルーレイやDVDを買ってくれるかどうかがビジネスの成否を決めるようになりましたが、数万円を負担するようなディープな客しか売上に寄与しなかったので、変にエロが多かったり過激な表現が増えるようなバイアスになっていたと思います。これがサブスクリプションサービスがメインになってくるとライトな層であっても多くの人が見てくれるということが金になる時代になるわけです。
加えて、サブスクリプションサービスの場合、視聴者がどのタイミングでその作品を見るのをやめたのか秒単位でわかるようになります。NetflixやAmazonがデータ活用に非常に熱心な会社だというのは有名ですので、これを利用しないはずがありません。今後本当の意味で視聴者が楽しめるような作りがより追求されるように変化するのだろうと予想しています。
もう一つ期待しているのが、従来から言われているアニメーター薄給問題の解決です。例えば下の記事ではNetflix制作の番組は従来の制作費の2倍が支払われたと報じています。
https://www.businessinsider.jp/post-160917
制作費が増えれば当然ながらアニメーターの人件費にもプラスの影響があります。深夜アニメが登場してからアニメ業界も随分変わりましたが、サブスクリプションによって今後新たな動きが出てくるでしょう。
Categorised in: 雑論