☆☆☆☆ アニメ「Darker Than Black」

2018.02.22

異能者によるスパイもの?何故異能者が現れたのか、世界がそれによりどう変容したかをまったく説明しないまま物語が進むが、断片情報から徐々に全容が伝わってくる絶妙なバランスと過酷な世界らしい独特の死生観、やたらとセクシーなキャラクターに魅了される重厚な物語

☆☆☆☆ 何を差し置いても観るべき

1. 世界観の作り込みが半端ない

2. やたらとセクシーで魅力的なキャラクター

3. バンバン死にます

こういう人にオススメ)

・複雑な人間模様が見たい方

・米ドラマ好きな方

・普通の異能バトルものに飽きた方

1. 世界観の作り込みが半端ない

る現代日本風の舞台でありながら、何か異常な出来事があって普通の世界とは変わってしまった世界が描かれます。ところが一般的な異能ものと違い詳しい設定説明はされません。契約者、対価、モラトリアム、喪失者、パンドラ、ニセの星空、ゲートなどの重要らしきキーワードについて断片的に少しずつ語られる断片が組み上がっていき、最終的に1つの世界観が伝わってくるという独特のスタイルをとっていて、全体像が見えてきたときにはちょっとした快感があります。よく知らないスポーツを観戦してても解説者とアナウンサーのやりとりから徐々にルールや試合の機微が分かってきたりしますが、語られる単語の意味が分からなくてもそれに対するリアクションを見ていると、契約者がどんな存在なのか、パンドラやゲートが何なのかがなんとなく伝わってきます。

謎を謎のままろくに説明しない作品も多い中、本作はただ説明しないのではなく、必要な情報が伝わるように丁寧に断片を投げてくるところが秀逸で、明確に語られないまま全体像がぼんやりと伝わってくるのがじつに良く、しっかりと世界観を固めた上でそれを隠しているので、世界の像がボヤけないまま謎に満ちた景色が維持されて不思議な存在感に仕上がっています。

2. やたらとセクシーで魅力的なキャラクター

本作は肌の露出ではないセクシーさが存在すると教えてくれます。人物の性格と背負った過去こそがこの色気の源です。ヒロイン3人からして強烈にキャラが立っていて、蠱惑的に笑い謎めいた言動で主人公を翻弄する大人びた少女アンバー、ひっつめ髪にしても隠しきれない色気が全身からあふれる若き女性警視、そして極端に無口な三白眼銀髪少女の3人からはすぐに目が離せなくなります。主人公も変に色っぽい黒髪男子でヒロイン以外にも地味にもてまくります。途中男性キャラとも妙に仲良くなったりして腐った層が色めきだったりした事もありました。敵として登場する契約者たちも見た目や性格が多岐に渡っており、また独特のかげりがある人物像が非常に魅力的です。

ここで契約者が能力を使った後に対価を支払うという設定がこれを深めているんですが、まるで能力という罪への贖いのように、その人の人生に関わる対価を払っていきます。指の骨を折るなんていう単なる罰としか思えない対価を支払う契約者がいたり、タバコの誤飲でこどもを亡くした母親の対価がタバコを飲み込んで吐き出すというものだったり。契約者はその能力を使ってしばしば人を殺しますがその償いをしないわけではない。そして、罪を背負った人物は魅力的というのを体現するように彼らは非常にセクシーです。単純に苦痛に顔を歪ませるのでなく、静かに何かに耐えるような、失った何かを想うような表情がじつに色っぽく気づくと夢中になっています。

3. バンバン死にます

とにかく次々に人が死にます。秘密組織に属する能力者である主人公が何かを奪い取ったり誰かを殺したりといった活動を繰り返す話ですのでそもそも人が死にやすいわけですが、それにしてもバンバン死にます。通りがかったクラスメートのお父さんがいきなり燃えだして死んじゃったりしますし、セリフのあるキャラが誰か出てきたら死ぬと思っとけば半分ぐらい当たります。終盤では契約者やゲートに関わる大規模な戦いがはじまり、レギュラーキャラまでどんどん死ぬので油断できません。

過酷な環境に身をおく契約者たちは感情を失って合理的に行動するのだと劇中で語られますが、実際にはときに不合理な行動をとり、どこか悲しげな顔で冷徹な決断を下す彼らには独自の死生観があるように見えて、次々に死んでいく彼らの姿には不思議な美しさがあります。このあたりも人物のセクシーさを増しているように思えますが、それが何なのかよく分かりません。命を賭して何かを為そうとする人々が、実際に命を落とすその瞬間に見せる表情は穏やかで、優しささえ感じます。

本作、僕は何度観たか思い出せないほど見返してます。二度三度観ても新しい発見のある、途方もない奥行きのある世界を是非楽しんで下さい。

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