☆☆ アニメ「プラネテス」

2018.02.22

幸村誠先生による同名コミックのアニメ化作品。宇宙にあこがれて船外活動スペシャリストとしてデブリ回収をやっている主人公「ハチマキ」が、木製探査船に搭乗するまでの物語を描く濃密な人間ドラマです。本作にはハチマキのような未踏の地を目指す人々、地球のしがらみに囚われてテロや争いに終始している人々、地球なんか関係なく枠を飛び越えた人々の3種類の人々が登場し、密接に関係しあい、それぞれの道を歩んでいきます。最初1~2話は少したるいですが、気づくと26話観終わっている非常に濃密な物語です。

☆☆ オススメ

こういう人にオススメ)
・冒険やフロンティアスピリットに惹かれる方
・宇宙開発、サイエンスストーリーが好きな方
・国際紛争やテロリズムの未来観を考えたい方

1. 未踏の宇宙を目指す人々

宇宙ものに欠かせないのがこのタイプの人々ですが、本作も同様に主人公がこのポジションです。ですがただ憧れてばかりいるのではなく、若い頃の憧れを一度失ったところからはじまり、多くの経験を経て自分が何であるか思い出す展開は単なる夢追いストーリーではなくなっています。自己啓発セミナーなんかで自分が死ぬときの事をイメージして、そのときにどうなっていたいかで今からの行動を決めようなんてのをやりますが、彼は公私に多くの人に会う過程で自分が何をやりたいのか思い出します。作中でも多くの人々から発せられた言葉が彼に影響を与えている事が描かれるシーンがあるんですが、別々のエピソードで何気なく発せられたと思っていたセリフが最後に1つに織り上がる様子は圧巻です。

2. 地球の重力に囚われた人々

この作品の深みを増しているのがこの人々。主人公は大企業の社員としてデブリ回収をやっていますが、デブリ回収は収益性の悪い官需業務で社会的ステータスがかなり低いものとして描かれます。当然企業の中で下に見られたり無理を言われるような場面も多いわけですが、その大企業も連合政府の有力者には逆らえません。一方で途上国のメーカーなどは非常にぞんざいに扱われるので、上からの無理を押し付けられたり、立場の弱い者同士協力したりするなかで多くの矛盾や社会問題を目の当たりにすることになります。当然そうした先進国や大企業による支配を嫌って武力で現状変更を図るテロリストたちもおり、彼らによる悲劇も繰り返されます。毎回の話数でゲスト的に登場する人物もそれぞれの人生がしっかりと描かれていて、かつ彼らがそれぞれに一生懸命自分の結論を出して行動していくので、結構細かく涙ぐむことになります。

本作で特に面白いのが、体制側にいながらテロリストに共感して反体制活動に加わっていく人物と、しがらみのど真ん中で泥水を飲みながら耐えていたのをやめて、未踏の宇宙を目指す人々の列に加わった人物が描かれることです。少しずつテロリストに共感していってしまう様子はとても悲しいですし、耐えるのをやめた人物の顛末は痛快そのもの。これが描かれている事でそれぞれのグループへの感情移入がより一層強まることになります。

3. すべてを突破した人々

本作の魅力のもう1つはこのカテゴリーだと思います。宇宙から見ると国境なんてないとか、宇宙と地球の区切りはないのだとか、そういうセリフが途中何度も語られます。その言葉を発する人物によって意味は変わってきます。国と国のしがらみはそれ自体を目の当たりにしてきた人はそれがら逃れられない一方で、そもそもそんなものは関係ないところで育ち、しがらみを軽々と飛び越えてしまう。その様子が正に最終話で描かれており、それこそが希望なのだと感じさせてくれます。これほど奥行きがある物語はなかなかないでしょう。

途方もないスケールで描かれる物語を是非楽しんでください。

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