配信サービスが変える視聴体験

2021.03.30

はるかな昔、アニメは放送時間に
テレビの前で待ち構えて視聴するものでした。

当日のその時間に見逃すと二度と視聴できないし
1つの家にテレビが1台しかないのは当たり前だったので
家族とのチャンネル争いに負けると観られなくなってしまう
それはそれはシビアなものでした。

これがビデオレコーダーの登場により状況は一変します。

テレビを録画する機能があるビデオレコーダーが
徐々に普及すると放映時間にテレビに貼り付いている
必要はなくなっていきました。部活や仕事、旅行で出掛けていても
不在の間に放映されたアニメを後でまとめて視聴できるようになります。

チャンネル争いに負けてもテレビで別番組を観ながら
ビデオは自分が観たいアニメを録画しているなんて事も
可能になりましたし、気に入った番組を録画しておいて
繰り返し視聴できるようにもなりました。

更にレンタルビデオ店が登場したことで
未視聴の過去の作品やテレビでは放映しなかった
劇場アニメ、OVAなんかを視聴することも
出来るようになりました。

時代が進むにつれて録画画質が上がったり
録画媒体がビデオテープからHDDになって
繰り返し視聴したときの画質劣化がなくなったり
複数チューナーを搭載して多番組を同時に録画出来るようになったりと
着々と良くなっていきましたが、ビデオレコーダー登場時ほどの
大きな変化はしばらくありませんでしたし
その後も大きくは変わらないんだろうと思っていました頃に
大きな変化がやってきました。

そう、オンデマンドの配信サービスの登場です。
オンデマンド見放題サービスの先駆けである
Huluが2011年に日本向けサービスを開始したのに続いて
同年にバンダイチャンネルもオンデマンドのアニメ配信サービスを開始。
2012年にはドコモがアニメ配信サービスdアニメストアを開始し
2015年にはNetflixが日本向けサービスを開始します。

しばらく静観していた僕も4年ほど前にNetflixに加入したところ
これがこれまでのアニメ視聴体験とあまりに違うのに驚きました。

従来との大きな違いは以下の2つでしょう。

  1. サービスに登録された作品ならどれでもすぐ視聴できる
  2. 録画媒体の入れ替えなどの切れ目なく続けて視聴できる

世間的には1による変化が語られることが多い印象ですが
僕には2の効果の大きさが衝撃でした。

放映が終了したアニメ作品を一気観する場合
録画データの場合はCMがちょこちょこ入ってしまいますし
1話ごとに1度再生が停止してしまいます。
これをBlu-rayやDVDで観るのであれば1枚に収録された
2~4話をCM中断なしでまとめて観られますので大幅に改善された
視聴体験が得られますがディスクの入れ替えの度に
作品への没入は一端途切れてしまうことになります。
このどちらかでしか視聴できない頃はそれが当たり前でしたし
それが問題とも特に思っていなかったわけです。

ところが配信サービスでアニメを視聴するとその切れ目がありません。
展開がスピーディーで面白い作品の場合は気付いたら1クール観終わってる
なんて体験ができてしまいます。これを実際に自分で体験してみると
ものすごく大きな違いで、これまでにこれほど作品視聴に没頭したことが
あったろうかと思うほどまったく違う体験でありました。

特にNetflixは次の話数にスムーズに繋がる体験を重視しているようで
操作しないでいると自動でEDを飛ばして次の話数がはじまる上に
次の話数の読み込みの為に待たされることもありませんので
ちょっと気を抜いていると話数が変わったことに気付かないことまであります。
これがまったく違う視聴体験をもたらしています。

更に驚いたのは、録画で視聴していたときにはなんだかダルくて
視聴が進まなかった作品まで無理なく最後まで視聴できてしまった事です。
次の話数に進める為の操作は思った以上に視聴の邪魔になっていたようで
最初にクリックすればその後は何もやらなくて済むという配信サービスの
特性が視聴体験にもたらした効果は劇的でした。

登録された作品であればどれでもすぐ視聴できるという配信サービスの特性は
ビデオレコーダーの登場がそうであったように視聴スタイルを劇的に変えましたが
それ以上にすべての話数を切れ目なく視聴できる特性が視聴体験自体まで変えてくれました。
僕は正直、自分で録画して視聴していた頃に戻れそうにありません。

と思っていたら、なんと一部の制作会社が
作品冒頭に制作会社のイントロムービーを入れるという
最悪の愚策をやりはじめてしまいました。

制作会社のブランディングの為に視聴者にアピールするという事なんでしょうか?
大学でお勉強したマーケティング戦略のプロ(笑)からしたら
合理的な戦略なんでしょうね。ですがそれは作品世界とまったく関係ない
イントロムービーで流れをぶった切り、作品に没入できなくして視聴体験を
大幅に毀損してまでやることなんでしょうか?

配信サービス側で別番組の宣伝を入れるという異常な愚策をやっている
Amazonプライムに並ぶレベルの大失敗を作品の評価に
コミットしなきゃいけない 制作会社がやってしまうとは…。

マジであれ、やめた方が良いと思いますよ?

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